ガチの採算度外視 びっくりするほどサービスのすごい定食屋

私が大学生の頃に入ったお店の中で「とんでもない定食屋」がありました。

短期派遣の仕事で埼玉県にある会社の仕事をしに行ったときのことです。
昼食を食べに職場の近所にあるいささか古びた定食屋にふらっと入ってみました。

個人経営の定食屋さんです。
60歳くらいの女性の方がおひとりで経営されていました。

何がとんでもないのかというと,提供される食事の内容に対して価格が安すぎるのです。

よくテレビで飲食店を紹介する番組で「赤字価格で提供しています!」なんていうお店があります。

これって,実際は赤字ではないですよね。
もしくは,あるメニューだけは赤字で,その他のメニューでがっぽり利益をとっています。

だって,商売ですもの。
利益をださなければ意味がありません。

しかし,私が入ったお店は本当に利益を度外視したお店だったんです。

採算度外視の定食屋の実態

大盛激安定食屋

どれも大盛で安すぎる

私が頼んだのは,マグロのぶつ切り定食。
確か650円でした。

出てきたマグロのぶつの量がはんぱない。
山盛りも山盛り。
山盛りという単語の本当の意味をこのときはじめて理解しました。
とても食べきれそうもない量です。

大学生の男子と言えば食欲旺盛です。
ちなみにマグロのぶつ以外にも小皿にさまざまなおかずが大盛りです。

まわりを見渡すと,例えばとんかつ定食を頼んでいるおじさん。
とんかつは2段重ねで皿からはみ出し気味状態。
明らかに普通のお店の2倍以上の量です。

こんな調子でどのメニューも半端ない大盛具合なんです。
それでもって,どれも価格は650円程。

ここで驚くなかれ,一番驚いたのは味噌汁です。

山でとってきたキノコの味噌汁

「なんだこれは?」
味噌汁を見たとき,その見た目に驚愕しました。

大小さまざまな種類のキノコがぎっしりとつまっているんです。

見たことのないキノコたち。
キノコの形はきれいに整っているのではなく,ちぎれていたり,いびつだったり,それぞれ個性豊かな形をしています。

思わず,お店の方に話しかけてみました。

「すごい珍しいキノコ類ですね。こんなにいろいろなキノコが入っている味噌汁は初めて食べますよ。」

お店の方は,待っていました!と言わんばかりに,キノコについての解説を始めました。

「どれも私が山でとってきたキノコなんだよ。」

な,な,ナニーーー!

これは予想できませんでした。
まさか,このさまざまなキノコたちは,自然界に生えていた野生のものだとは。
マリオもびっくりです。

一瞬「毒キノコとかないだろうか」と心配しましたが,美味しいし,まわりの人も平気で食べているので,全て食べきりました。

うーーん,なんだか「日本昔話」に出てきそうな味噌汁でした。

ちなみに,味噌汁やごはんはおかわり自由。
頼めばおかず類もおかわりさせてくれそうです。
もうなんでもありな雰囲気が漂っています。

もしかしてこのマグロも海で釣ってきたとかないよね?

あまりの安さと量とサービスに面食らうばかりでした。

混んでいない店内

ここまで読んだ方は,次のように感じたのではないでしょうか。

・そんなに安くて量も多くてサービスがいいなら,お店はものすごく繁盛しているのでは?

実際のところは,そんなに繁盛しているわけではなさそうです。
2回行きましたが,2回とも,お客さんの数はまばらでした。

その原因は3つ考えられます。

①立地がいまいちと言う点
②お店の方が繁盛することを求めていないということ
お客さんが求められることがあるということ

3つ目はどういうことでしょうか。

お客さんが求められること

私がこのお店に2回行ったことで感じたのは,料金以外にあることを求められるということです。
それは一体どんなことなのかというと・・

・お店の方との本気の触れあい

お店の方は,単に商売としてお店を経営しているのではなく,お客さんとの触れ合いを非常に大切にしていました。

親切すぎるサービスは,利益以上にお客さんに喜んでもらいたいという思いから生まれています。

大変うれしいことなのですが,出された食事を食べているときにものすごく表情を観察されるのです。
そして,食べた後に食事に関する感想をじっくりと聞かれます。
うーん,これがかなりのプレッシャーでした。
美味しいのですが,「美味しいでしょ?」と圧力を感じながら食べると,美味しさが半減してしまいます。

また,大盛りの量もこれまたプレッシャーとなります。
なぜなら,残すとものすごい罪悪感が生じるからです。

食べている間に会話が求められるのも多少ストレスになりました。
もちろん,会話がしたい場合は楽しいのですが,仕事で疲れ切っている場合,頭をからっぽにしてのんびり食事がしたいときがあります。
そんなときでも,お店の方は始終笑顔で話しかけてくれるので,なんだか余計に疲れてしまうときがありました。

それもこれも,あまりのサービスに恐縮してしまうことから生まれる緊張感でした。
もういっそ1500円くらい払えば,縮こまることなくリラックスして食事を楽しめたと思います。

まとめ

何十年たってもキノコの味噌汁が忘れられません。
なんだかとても温かく印象に残るお店でした。

お店が利益を追求するのは当たり前なのですが,利益だけを大事にするのではなく,お客さんのことを本当に思いやって経営されている姿勢はありがたいことです。

私は,一見のような客だったので,お店になじめませんでしたが,おそらく近所にこのお店があれば常連になっていたと思います。

近年はチェーン店だらけになってしまいましたが,こうした個人経営のお店にも個性を生かして活躍してもらいたいものです。

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