情報の印象操作の実態を知ることで正しく情報を受け取ろう

メディアによるやらせや印象操作が定期的に問題となります。

情報を発信している人は,たいていなんらかの意図をもっています。
最も単純な意図は視聴率のアップや雑誌の売り上げ部数増加です。

より売れる情報を生み出すため発信者は情報の見せ方に細工をします。
演出をして人々が興味を惹かれやすい情報に加工するのです。

私たちは無頓着に情報を受け取っていますが,情報は思った以上に操作されて伝えられています。

こうした情報のコントロールは,三流週刊誌だけに限ったことではありません。
ほとんどのメディアは情報を伝える際何らかの印象操作をしていると思ってよいでしょう。

印象操作の実態をきちんと理解し正しく情報を受けとる方法

メディアからの印象操作の実態を知り,簡単には情報に踊らされないようにしたいものです。
私の体験談も交えながら,印象操作の実態の一部を知り,正しく情報を受け取る方法を考えていきます。

テレビの取材を受けて感じたこと

私の職場は最近2度テレビの取材を受けました。
どちらもNHKからの取材で,ある番組(番組名はふせます)で使用する目的とのことでした。

一度目の取材:働き方改革への取り組みについて
二度目の取材:コロナ感染症予防についての取り組みについて

NHKは公共放送です。
情報を最も正確に伝えなければならないメディアです。

この2度のNHKの取材を経験し,NHKですらある程度の印象を操作するのだと知りました。

2度の取材ともに,1か月前には取材の依頼がありました。
そして,短期間のうちにどちらも2~3回ほど先方のディレクターを交えた打ち合わせを行いました。

この打ち合わせで指示が結構多いのです。
「あーしてくれ,こんなことを言ってくれ」といった具合です。
取材の流れの台本まで用意されており,そこには私たちが答えそうな回答まで書かれています。

関係ないとんちんかんなことを話されたら困るのはわかりますが,なんだか「こういう内容をしゃべってね!」と口裏合わせでもしているような気分になりました。

結果的に放映された時間は2回とも1分程でした。
この1分の放映内容に対し,録画した時間は2回の取材共に1時間以上でした。

私は1回目の取材の際,場所や時間を変え3回もインタビューを受けました。
しかし実際の放映には1秒も使われていませんでした。

その他にも多くの人がインタビューを受けましたが,本番で使われたのはごく一部。

 

どういう基準でこの「使う」「使わない」を分けているのでしょうか。

 

 

使われた映像は,打ち合わせで「こんなことしゃべってもらえるといいな」と言われたことをほぼまんま話した人のものでした。

反対に,使われなかった映像は,働き方改革がまだ進んでいない実態があることも正直に話した人や,コロナ感染症予防が実際は理想通りに実施できていないことを正直に話した人の映像でした。

ようするに,取材する側(情報発信者)は,思い描く絵がすでにあり,その意図に反する内容は必要ないのです。

これって,ちょっと怖くないですか?

ニュース内で街角を歩く人にインタビューをしている様子が毎日のように流されます。
これも情報発信者の意図に反する内容を答えた人の映像を流さなければ,視聴者に偏った印象を与えることが簡単にできてしまうのです。

報道番組の台本

私の友達にキー局でのメジャーな報道番組(平日昼時に数時間放映)のディレクターをしている人物がいます。
「内緒にしてくれ」と言われながら,番組の台本を見せてもらいました。

内緒と言われたのでおおざっぱにしか明かしませんが台本の内容に驚きました。

司会者の主なセリフが決まっているし,コメンテーターとの討論の内容まで書かれています。

 

「えええ?コメンテーターって自由に意見を言っているんじゃないの??」

 

 

もっと驚くのが,コメンテーターと司会を交えて意見を戦わせて雰囲気が悪くなる様子や笑いが起きる場面まで台本に書かれていました。

ほとんど茶番劇じゃないか!

テレビって我々が思っているよりはるかに作られたものなんです。
ちょっとがっかりしました。

吉村知事のうがい薬に関する発表について

吉村知事がコロナ感染症のPCR検査の陽性率を下げる手段としてポピドンヨードを使ったうがいが有効であると発表しました。

この発表は多くの批判を浴びました。
なぜなら次のような問題があるからです。

◆うがい薬でうがいをした人と,水や他の成分でうがいをした人とを比べていないので,うがい薬の効果がどれほどあるのかがわからない。
◆そもそも,口の中のウィルスを減らしても,体内のウィルス量には関係ないため治療の効果は一切ない。
◆本当なら検査で陽性と判定されるはずの人が一時的に口腔内のウィルス量が減るため,陰性と間違った判断をされてしまう。
◆わずか40数人分のデータしかない。
◆大げさに効能を発表したため,ポピドンヨードの買い占めが発生し,医療現場で使用するための分に影響がでてしまった。

この発表は印象操作とは異なりますが非常に似たような効果を発揮したので考察してみることにしました。

私がここで問題にしたいのは買い占めに走った人達です。

会見の影響を真に受け,もしくは拡大解釈してポピドンヨードを買い占めに行った人たちが多数いました。

この人たちは,会見の内容も把握していなければ,もちろん会見内容の問題点も把握していません。
特に深くは考えずに,気持ちがあおられて買い占めにいったのです。

与えられた情報の印象をうのみにして間違った行動に駆られたのです。
なんと愚かなことでしょうか。

言葉による印象操作

言葉による印象操作は子どもの言い訳に似ているような気がします。
自分に都合のよいところだけを切り取って報告しようとするからです。

言葉による印象操作の主な例をみてみましょう。

・都合のよいところだけを切り取って伝える。
・みんなが求めているような印象を与える。
・有名人や権威のある人も求めているような印象を与える。

この他にも様々な印象操作の方法があります。

例えば,選択肢を与えて選ばせる際のテクニック

A:100人が受けて10人が失敗する手術
B:90%成功する手術

どちらも同じことを言っているのですが,ずいぶん印象が違いますよね。

似たような例をもう一つ挙げます。

A:あとエネルギーが50%しか残っていない
B:まだ50%もエネルギーが残っている

これもどちらも同じことを言っているのですが,印象が違います。

このように事実を曲げずとも内容を切り取ったり表現の仕方を変えたりすることで,情報が与える印象を大きく操作することができるのです。

数値やグラフが示されているものこそ怪しい

ある提案がなされるとき数値やグラフを用いて説明されると信憑性や説得力がぐっと高まります。
しかし気を付けないとだまされてしまうことがあるんです。

詐欺師は数値やグラフを巧妙に操作して人をだまそうとします。
人が数値やグラフをだされると,よく考えずに信用しようとする習性を利用しているのです。

数値やグラフをだされた際に気をつけること

◆データの総数は十分な量か。総数が大きい程信用度が上がります。
◆データの取り方は適切か。アンケートで「どちらでもよい」という選択肢を作り,それを選んだ人をどちらか意図する選択肢の数値に加えてしまうという方法があります。
◆データが対象とした人々は適切か。対象を無作為に選んだ場合と,希望者から選んだ場合では結果は大きく変わります。また,アンケートを取る際はアンケートの目的を説明して行うのと,何の説明もせずに行うのでも結果が変わってきます。
◆グラフのメモリの単位の大きさを注視する。1メモリの数値を小さくしたり大きくしたりすると,グラフが与える印象が大きく変わります。
◆グラフのメモリが0から始まっているかを見る。個々の値に大きな差があるように見せる方法として軸の最初の数値を0から始めていないグラフがあります。

これら以外にもデータの見せ方を細工する方法がたくさんあります。
興味のある方は,「統計」「操作」などで検索してみてください。

どうやって正しい情報を受け取ればよいのか

私たちは情報をどうやって正しく受け取ればよいのでしょうか。
絶対法則はありませんが,対策はいくらでも考えられます。
以下に情報を受け取ったときの基本的な心構えについて紹介します。

・まずは与えられた情報をうのみにせず,疑い,問題点を浮き彫りにする
・与えられた情報が常識的に考えて妥当かどうかを見極める
・与えられた情報と過去の出来事を比較して信憑性を見極める
・だれがどのような意図をもって情報を発信しているのか考える
・その情報が広まると得する人損する人は誰なのかを考える
・情報の内容が5W1Hの内容をしっかり抑えているかを確認する。
(だれが,いつ,どこで,なにを,なぜ,どのように)

まとめ

印象操作は演出と最初に書きました。
お笑いや演劇などでは優れた演出が優れた作品作りを助けます。

しかし,この演出をニュースや政治などに悪用すると問題が発生します。
なぜなら,ニュースや政治はなるべく事実を正確に伝え,その正確な事実を基に人々が考えをめぐらし自分の意見を作り上げていくべきだからです。

ゆがめられた情報を与えられ扇動されるのは愚かしいことです。

それでは印象を操作するのを禁じる手立てを講じればよいのでしょうか。

この手立ても必要ですがなかなかうまくいきません。
なぜなら以下のような理由があるためです。

・印象操作は大きな効果を発揮する麻薬のようなものであること
・うそをついているわけではないので取り締まるのが難しいこと
・憲法には表現の自由が定められていること

ではどうすればよいのでしょうか。

私たちが,正しい情報を見抜く目を鍛えるしかないのです。
印象操作の手法を知り,発信者の意図を見抜けるようになるのです。

もちろんこの方法にも限界があります。
全国民が見抜く目をもつことは無理です。
およそ半数の人が見抜く目をもつことができれば十分です。
半分も鋭い目をもっている人がいれば全体としては印象操作に踊らされることはなくなるでしょう。

子どもは友達同士で嘘をつき合うことによって次第にだまされなくなっていきます。

世の中には印象操作や情報操作がいくらでも使われています。

もし何度もこうした情報に踊ってしまった人は,そろそろ踊り疲れてじっくり腰を落ち着けるのもよいのではないでしょうか。

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