禁止事項の多い家庭で育つと欲求をコントロールできない子が育つ!

子どもの欲求を押さえつけるのは逆効果

禁止は逆効果

子どもを育てるときに「あれはだめ」「これはだめ」と禁止ルールを作る親がいます。

どの家庭にも何らかのルールはあるでしょう。

しかし「極端な禁止ルール」を設けている家があります。
子どものためを思ってなのでしょうが,結果的に逆効果になっている場合がほとんどです。

私の両親も禁止ルールを多く設けるタイプでした。
教育に関心があり,私が将来立派な大人に育つようにと考えてルールを設けていました。
果たしてその思いは実を結んだのでしょうか。

例えばこんな禁止事項

以下のような禁止事項を設けている家庭があるようです。

・おかし禁止
・テレビゲーム禁止
・テレビのバラエティー番組禁止
・エアコン禁止
・漫画禁止
・お小遣い禁止

ちなみに私の家庭では「カップ麺」「エアコン」「漫画(内容によっては許可)」「テレビゲーム」「テレビ(一時期は全面禁止,それ以降はバラエティー番組禁止)」が禁止となっていました。
学校で同じクラスの人に私の家と同じ禁止ルールがある家は1件もありませんでした。

最近の世間の家庭環境はどうでしょうか。
例えば「ゲームを禁止」をしている家庭はどれくらいあるのでしょう。
朝日学生新聞社が2016年に行った調査によると禁止している家庭は4.6%でした。
極少数派ですね。

上記に挙げた他の禁止事項も,極少数の家庭でしか見られないルールのようです。

ちなみに上記の中の「エアコン禁止」について興味深い話が一つあります。
児童相談所に「虐待」や「ネグレクト」の疑いについての通報があった場合,児相は「虐待」や「ネグレクト」の一つの材料として「エアコン禁止」にも注目するようです。子どもの健康面に関係することだからですね。

なぜ禁止しようとするのか

1つずつ「想定される具体的な禁止理由」と「それに対する反論」を書き出してみます。

おかし禁止
(理由)食品添加物は体に悪い。甘味は自然のものから摂るべき。

⇒食品添加物は国によって安全性が確かめられて使用されています。
また,添加される量はその影響を無視してもよい位わずかな量です。
厳密に自然のもの100%にこだわるなら,ほとんどの食品は購入できません。

テレビゲーム禁止
(理由)ゲームばかりするようになり勉強をしなくなる。
ゲームは人が作った遊びであり,受動的である。子どもは自分で遊びを考えたり,外で元気に遊んだりと積極的に遊ぶべきである。

⇒人が作ったプログラムでも,操作して楽しむからには積極的な遊びと言えます。
例え受動的な遊びだったとしましょう。何が問題なのでしょうか。
子どもは積極的な遊びでも受動的な遊びでも,自分が楽しいと思う遊びをすることで満足し,健全に発達していきます。
外で元気に遊ぶことについては,ゲーム禁止と関係なく賛成します。

*2016年に朝日学生新聞社がゲームを禁止した家庭と,禁止していない家庭の子の成績と学習への集中力を調査しました。結果は,差がみられませんでした。ゲームを許すと勉強をしないというのはイメージに過ぎないようです。

テレビのバラエティー番組禁止
(理由)バラエティー番組は下品な内容が多く,粗暴な子が育つ危険性がある。

⇒バラエティー番組には確かに下品なセリフやバカげた行動が多くみられます。
当然です。
だって,そうした「おバカなこと」や「ふざけあい」を楽しむ番組なのですから。
子ども同士が遊ぶときも,ほとんどが「おバカなこと」や「ふざけあい」をしています。
実はこれらの行為は子どもの成長に非常に大切です。
「ふざけあい」をすることで,人と楽しく付き合える方法を学びます。
冗談やユーモア,言葉遊び,演技をすることや,言葉の言外に隠れた意味の読み取り能力など多くのことを学んでいます。
番組ではときに,過剰な「いじり」をする芸人が出ているものがあります。
もし過剰だと判断したら,その点を子どもと一緒に考えながら「見ない」ようにすればよいのです。
ただし,どんなに下品な番組を見たからといって下品な子が育つわけではありません。
その考えは「おなかが出てきたから腹筋さえすれば腹が引っ込む」と考えるのと同じくらい短絡的です。
あるとしたら普段から親が下品に育てていた子が,下品な番組を見て同調するだけです。
子どもは現実の生活と,アニメやテレビ番組の内容を分けて見ています。
リアルと現実を混同してしまうようなら,テレビ番組を禁止するのではなく,正しい判断力を養い,きちんと区別できる能力をつけさせることが必要です。

エアコン禁止
(理由)昔はエアコンなどなかった。自然の環境と共生して生きていくべき。我慢をすることが人を育てる。

⇒自然の環境を信仰するなら,何も持たずに無人島に行って暮らしましょう。
我慢のさせどころがずれています。

漫画禁止
(理由)漫画は,絵が描いてあるため,人の想像力の発達を妨げる。また文字が少なく勉強にならない。本は,文章を読むことで情景を想像し,脳が発達する。

⇒本も漫画もどちらも子どもの発達に貢献するものです。
発達に貢献するかどうかの前に,子どもの楽しみです。

お小遣い禁止
(理由)まだ自分で稼いでいない子どもにお金を渡す必要はない。必要があればその都度親が買ってやればよい。

⇒この理屈が通るなら,子どもはご飯も食べられませんね。稼いでいないのですから。

一つ一つていねいに禁止する理由をみてみました。
どの理由も一理はあるんです。
しかし短絡的な理由や精神論が多く,子どもの健康的な成長に効果があるのか疑問点が多く残ります。

禁止されるとどうなるか

まずは,私の例を見てみましょう。
禁止された当時は禁止されたものへのあこがれや欲求が強くなる一方でした。

「カップ麺」
⇒禁止されているときに,たまたま食べたカップ麺の味が忘れられず。
近所の人にカップ麺を大量にお土産でもらったのですが,親は捨ててしまいました。
そのときの「がっかり感」は今でも忘れません。
大人になってカップ麺を無性に欲するようになりました。
「漫画」
⇒反動で,ものすごくはまるようになりました。漫画おたくといってよい程です。
「テレビゲーム」
⇒これを禁止されたことが一番つらいことでした。なぜかというと,友達との会話に入れないからです。人気ゲームが発売され,他の子どもたちが一番わくわくするようなときこそ,私は逆に最も辛い思いをしていました。
無理に,ゲームの話題についていこうとすると,とてもみじめな思いを味わいました。
友達の家に行き,ゲーム機を貸してもらう際も非常に肩身の狭い思いをしました。
親にはこの事情を説明しましたが,全く聞き入れてもらえません。
親にとっては信じる理想の教育方針であり,我が子の将来のためという信念があるからです。
(人の心を無視した理想や信念は怖いですね。歴史をみても,多くの悲劇を生んでいます)
大人になってゲームができるようになると,一時期狂ったようにゲームに依存してしまった時期があります。
「テレビ バラエティー番組禁止」
⇒ゲームの禁止同様,友達との会話に入れず辛い思いをしました。
みんなが楽しそうに話す芸人の名前やコントの様子など全くわかりません。
大人になって,当時のあこがれからか一時期「お笑い」コンビを組んで活動していました。

どうでしょう。
禁止されたもの全てに反動が働き,親の教育的思いによる「禁止」は見事に真逆な効果を生みました。

他にも禁止事項が多かった家庭の子どもの体験談を調べてみると,ほとんどの人が私と同じように逆効果であったと述べていました。

その中から切ない例を一つ紹介します。

<おかしを禁止されていたAさん>
家で市販のお菓子を禁止されていたAさん。
町内会の子どもの集まりで,お菓子が出されたときがありました。
たまたま親が一緒にいなかったため,むさぼるように出されたお菓子にがっつき,まわりの保護者から不審がられていました。
Aさんは大人になって,コーラやお菓子を貪るようになりました。
子どものころに抑えられていた欲求がなかなか抜けないためです。

欲求を満たすことで感情のコントロールを学ぶ

人は押さえつけられると大きなストレスを生じます。
ストレスは心のゆがみを生みます。
禁止されるほどやってみたくなる心理現象を「カリギュラ効果」と言いますが,好奇心や欲求が強い子どもにとってこの効果は大人より強力に働きます。

禁止されたことは親に隠れて行おうとするため,「嘘をつく」ようになったり「隠れて悪さをする」習慣が身についたりしてしまいます。

逆に欲求が満たされれば満足し,次第に欲求をコントロールすることを覚えます。
もちろん,欲求を満たしてもコントロールが上手にできないこともあります。
それなら,そのときは親が介入し,子どもの実態に寄り添いながら育てていけばよいのです。
はじめから子どもの欲求を押さえつける方法は支配的であり,子どもの主体性育成の妨げになります。

まとめ

子育てに迷うときは誰にだってあります。
ましてや一人目の子どもを育てるときは全てのことが初体験であり,わからないことだらけです。

私は,自分が子どものころに家の中にあった「禁止事項」により辛い思いをしたことを今でもよく覚えています。

だからと言って親を恨んでいるということではありません。
教育熱心だったため,禁止事項以外の面ではかけがえのない多くの大切なことを教えてもらうことができ,今でも尊敬しています。
私の現在の趣味の多くは「禁止事項」から生まれたものです。
副作用から生じた効果が私の貴重な人生の一部となり,立派なアイデンティティとなっています。

とはいえ,禁止事項を作る育て方よりも,子どもの欲求を満たすことで,子ども自身に欲求のコントロールを学ばせることの方がもちろん健全です。

自分で欲求や感情をコントロールする方法を学べば,大人になってからも精神的に安定します。

いわゆる「メンタルの強さ」につながります。

子育てに対する信念を持つならば,一つだけでよいのではないでしょうか。

「子どもが自信を持って楽しく生きていけるよう,愛情をたっぷり注ぐ」

どうでしょう。

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