「人にはそれぞれの正義がある」の真実

人はそれぞれ「正義」があって、争い合うのは仕方ないのかも知れない
だけど僕の嫌いな「彼」も彼なりの理由があるとおもうんだ

これはSEKAINOOWARIというバンドの「Dragon Night」という曲の歌詞の一部です。

人にはそれぞれ信じるものや考え方があります。
話し合いで分かり合えることもあるのですが,いくら話し合っても平行線をたどることがあります。

なぜそれぞれの正義(考え方)があるのか

人それぞれの正義

考え方は日々修正される

以下のように,さまざまなことから知識や影響を得て考え方は養われます。

・体験を通して生まれる
・親や先生に教わる
・本から学ぶ
・友達や恋人から影響を受ける

また,人は日々新しい知識を増やしていきます。
よってもともとある考えは,新たな知識を加えバージョンアップしていきます。
1年後の自分は今の自分にはない新しい考え方を持っているかもしれません。

この理屈で考えると,人は新たに得る情報の内容によってはあらゆる考え方を身に着けることができるように思えます。

しかし実際はそんなことはありません。
生まれたばかりでまだ何の知識もない10人が,大人になるまでに,全く同じ知識を与えられたとします。
その10人は全く同じ考え方を持つ人間に成長するでしょうか。
育ちません。
10人がそれぞれ異なる考え方を持つことになるでしょう。

なぜなのでしょうか。

人は生まれる前から「思考の方向性」をもっている

人は生まれる前から個々に「思考の方向性」を備えています。
「思考の方向性」に従って具体的な価値観や考え方を作り上げています。
思考の方向性は,大きく二つの要因から形成されます。

1つは,遺伝子です。
遺伝子によって,ある程度人の性格や気質が決まります。
性格や気質は,「思考の方向性」を決める重要な要因となります。

2つ目は,「胎児のときに作られる脳の初期設定」です。

どういうことなのでしょうか。

当然ですが人の考えは脳から生まれます。
そして,脳というコンピューターは,生まれる前,まだ胎児のときに基本的な初期設定がセットアップされます。

この初期設定に影響を与えるのが「性ホルモン」の働きです。
胎児は子宮の中で性ホルモンによって脳の発達に大きな影響を受けます。

性ホルモンが脳の初期設定を決める

胎内にいるとき,男児は女児よりも圧倒的に大量のテストステロンという「性ホルモン」を脳に浴びます。
このテストステロンの量の違いにより,脳の(攻撃性・支配欲の強さ・性的欲求度)などが左右されます。
テストステロンを多く浴びて生まれた子は,怒りっぽく,支配的な面がある一方,前向きでたくましい面もあるといった傾向がみられます。
テストステロンを少なく浴びた子は,この逆のパターンになります。
近年では,テストステロンの働きが,警戒心の強さに関係することも明らかになってきています。

実は,性ホルモン以外にも胎児の脳の発達に影響を与えることがあります。
妊娠中の母親の精神状況です。

妊娠中の母親の精神状態が脳の初期設定に影響を与える

母体が強い不安やストレスを抱えていると、胎児の脳の発達に影響が生じることがわかっています。その影響はさまざまな形となって表れます。
情緒が不安定になりやすくなったり,うつや低体重,各種発達障害が生じやすくなったりします。
この影響は悪く働くことが多いのですが,まれに特殊な才能を生み出すこともあるようです。

 

このように人は生まれる前から,既にさまざまなタイプの脳にセットアップされます。
脳の特性のうち,「支配欲の強さ」や「攻撃性」,「不安感受性」は特に人の考え方や価値観に対し大きな影響を与えます。
例えば両親が兄弟を同じように育てても,脳の初期設定の違いにより,異なる考え方を持つ子どもが育ちます。

初期設定が済み,出荷(出産)された脳は,その後の人生の中でさまざまな体験をして更新プログラムをインストールすることでバージョンアップされ,思考を発達させていきます。
ただし,初期設定の影響は非常に大きく,考え方・価値観の方向性は決まっているため,その方向性に反する考え方を身に着けることはほどんどないのです。

それぞれの正義の例

「それぞれの正義」の例を一つ出して,人それぞれの考え方の実際についてみてみます。
わかりやすい例として,「国の守り方」についての考え方の違いを検討してみましょう。

多くの考え方がありますが,大きく分けると以下の二つになります。

・兵器や軍を持ち,戦って国を守る。
・兵器や軍を持たず,話し合いで国を守る。

どちらが正しいのでしょうか。

それぞれの考え方を持つ人にとっては,どちらも正しいのです。
まさに人それぞれの正義です。

「戦い」を選択した人の主な言い分はこうでしょう。
「世界の中には話し合いが通じない国もある。過去の例をみても,話し合いで戦争が防げないことはわかっている。国民の領土や命を守るためには,戦うことも必要である。」

確かにそうですね。

「戦わない」を選択した人の言い分はこうでしょう。
「戦いは,新たな戦いを生む。国を守るための戦いと言っても所詮は人を殺す残虐な行為であり許されない。戦争が起きないように,話し合い,交流し,世界が一丸となって協力していける体制を築くべきである。」

確かにそうです。

二つの考え方はどちらも国を守りたいという志から生じていますが,相反しています。双方,それぞれの論の正当性をさまざまな根拠を挙げて主張するでしょう。その多数の根拠を一つ一つ話し合ったとしても,折り合いをつけるのは非常に困難です。なぜなら2つの考え方の違いは,根本的には脳のタイプの違いから生まれる「攻撃性」「不安感受性」の差などから生じているからです。
脳のタイプによって正解が異なるのです。

まとめ

人にはそれぞれの考え方があり,その考え方がどのように生まれてくるのかについて深く考察してみました。
考え方は単に得た知識から生じるのではなく,脳のタイプが作り出しています。
よって,人の主張の言葉尻をとらえるだけでなく,主張する人がどういうタイプの脳を持っているのかを理解することで,人間関係をより円滑に結ぶことができるはずです。
理路整然と立派な演説をぶっている人も,その考え方の根本にあるのは実は単純な「欲求」や「不安」,「攻撃性」から生まれたものかもしれません。

お互いをよく知ることで,認め合い,より争いの少ない平和な社会を継続していけるとよいですね。

3+
タイトルとURLをコピーしました