動物を食べる私たちの生活を考える 肉食の是非

牛太郎からの手紙

動物を食べる

拝啓

僕の名前は牛太郎です。

僕は今,ある牧場で育てられています。
僕だけでなく家族や友人も一緒に飼われています。

僕たちを飼育している方はとてもいい人です。
おなかいっぱいにご飯を食べさせてくれるし,住んでいる場所をきれいに掃除してくれます。
僕の体もきれいに洗ってくれます。
頭もなでてくれます。
最近,牛五郎兄さんからとても怖い話を聞いてしまいました。
ぼくたちは成長するとどこかに売られるらしいのです。
しかも,売られた後で殺され,なんと最後は食べられてしまうということです。

ぼくが生まれたときから優しく育ててくれた,飼い主さんや人間の方々が,まさかそんなひどいことをするはずはないですよね?

もし,そんなひどいことをしているなら,もうやめてください。
そして,僕たちにしてきたひどいことを反省し謝ってください。
ぼくたちを食べなくても,人間は生きていくことができますよね。
よろしくお願いします。

敬具

「牛太郎」

人間のみなさんへ

人間から牛太郎さんへの返事

牛太郎さん はじめまして。
私は牛太郎さんの飼い主のお友達です。

飼い主さんから,牛太郎さんの手紙を見せてもらいお返事を書くことにしました。

牛太郎さん,ごめんなさい。

牛太郎さんが聞いた怖い話というのは本当の話です。
私たち人間はあなたたちの体を食べることにより健康な生活を送ることができます。

確かに人間は動物のお肉を食べなくても生きていくことはできます。
私たちの中で動物の肉を食べずに生活している人たちもいます。

ですが,ほとんどの人間は動物の肉を食べながら生きています。

実は,私たちは長いことあなたたちのお肉を食べて暮らしているのです。
私たちが動物のお肉を食べ始めたのは250万年前だと考えられています。
お肉を食べたことにより,必須タンパク質や脂肪を中心に豊富な栄養を短時間でとることができるようになりました。
植物を食べると消化するのに長時間かかるのですが,肉は植物より消化しやすいから腸も短くて済みます。消化に使うエネルギーをその他の活動に回すことで脳はさらに大きく発達したと考えられています。
そのころ私たちの祖先と同じような「アウストラロピテクス」と呼ばれる種など,他にも数十種類の人類がいました。
今の私たちの祖先以外は動物のお肉を食べなかったため栄養が不足したり,生存競争に負けたりして絶滅していきました。

2019年,オーストラリアに住む夫婦が,赤ちゃんに動物性食品を一切与えずに育てていたところ,重度の栄養失調に陥り,体重不足で,発達に遅れが生じてしまいました。
この夫婦は動物から作られる食べ物を一切口にしない「ヴィーガン」と呼ばれる方たちです。
夫婦はこの件で起訴され,十分な食事を与えず,女児に重傷を負わせたと起訴事実を認めました。
その後オーストラリアの裁判所はこの夫婦に300時間の社会奉仕命令を言い渡しました。

この例からもわかるように,あなたたちのお肉を食べて進化してきた私たちは,ほとんどの人がもうあなたたちなしでは十分に健康な生活を送ることができません。
動物のお肉を一切食べなくても暮らしていけますが,その場合はその他の食品で十分な栄養を工夫して上手にとらなければ健康を害してしまうのです。

今述べてきたことは私たち人間の一方的な都合です。
人間が必要としたからといってあなたたちが食べられなければいけないという理由にはなりません。

もう少し私たちの言い訳を聞いてくださいね。

この地球上の動物はあなたも私も含めなんらかの命を得て生きることができます。
自然界では弱肉強食の厳しい掟があり,食物連鎖により生態系が守られているのです。

食べる方(捕食者)が悪いとか良いとかいう問題ではありません。

動物が他の動物の命を得て生きているというのは自然の摂理なのです。
これは人間か決めたことではないんです。
人間だって場合によっては食べられる側になります。

あなたたち牛さんも植物を食べることにより生きることができます。
植物も命ある立派な生物なんですよ。

私たちはこれからもあなたたちのことを感謝しながら美味しくいただいていきます。

最後におなたたちのことをいただく際に守っていく約束について言わせてください。

・感謝の気持ちを忘れません。
・なるべく無駄のないようにいただきます。
・あなたたちが最後を迎える際は,なるべく痛みのないようにします。
・共生していくので,あなたたちの子孫が絶えないように大切にします。

私からの返事は以上になります。

あなたが望む回答になっていないかもしれません。

命あるものは必ずいつか死を迎えます。
お互いに,限りある命を大切に生きられることを願っています。

飼い主の友達より

牛太郎さんへ

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