香川県議会で成立した「ネット・ゲーム依存症対策条例」は間違っています。

「ネット・ゲーム依存症対策条例」が香川県議会で可決,成立しました。

その内容は以下の通りです。

「ゲーム時間は1日60分」などと家庭内で守るルールの目安を規定。努力義務として求める。条例は依存防止に向けた県や学校,保護者の責務を規定。家庭内ルールの目安として▽18歳未満のゲーム時間は1日60分(休日は90分)まで▽小中学生以下は午後9時,高校生などは同10時以降,スマートフォンなどの使用を控える――の2点を示し,子供が守るよう保護者に求める。
引用:毎日新聞記事

ゲーム禁止

ゲームの時間を条例で定めるのは適切なのか?

家庭でのゲームの時間は果たして条例で定めることなのでしょうか?
違いますよね。はっきり言って家庭内で考える問題です。
どうしてこのような間違った条例が可決されてしまったのでしょうか。

ネット・ゲーム依存症対策条例が可決された背景

子どもの「ゲーム」や「YouTube」「スマホ」への依存について悩んでいる保護者が多く存在し,そうした保護者から県に条例を作るよう多くの要望があったとのことです。
そして,多くの保護者に条例に関するアンケートを取ったところ,圧倒的に賛成意見が多かったから作成したというのです。
*ちなみに,このアンケートの賛成意見は,県の職員が結果を操作したとの強い疑いがあります。

保護者が子育てに手を焼いている様子は確かに理解できます。
何度言ってもきかない子もいるでしょう。

保護者の言い分はこうでしょう。
「うちのバカ息子が,スマホを夜中まで見ていて,注意しても聞かないんです。
どうか,法律でルールを定めてください。そうすれば息子に,法律守れ!って言えます。
それから,学校でスマホの使い方を厳しく指導するよう法律に加えてください。」

気持ちはわかりますが,要求は間違っていますね。お門違いもいいところです。
家庭のしつけを,行政や学校に押し付けてはいけません。
ましてやしつけについて気軽に法律で定めようするのは危険です。

こんな条例も許されてしまう?

このような条例が正しいというなら,以下のような法律もありえるということです。

①子どもがチョコを食べすぎちゃう。言っても聞かない。⇒「チョコ一日30グラム条例」
②子どもに勉強しろって言っても聞かない。⇒「毎日2時間勉強しなきゃいけない条例」
③子どもがお風呂を好きすぎて,長風呂になる。⇒「お風呂は15分まで条例」
④子どもが朝うんこをする時間が長い。⇒「うんこは親の後に,5分以内でしなさい条例」
世間の声を間違って受け止めてしまった政治

法律は社会生活を保つために,公共の利益と生活の安定,安全を守るために定められるものです。
公共の利益を守るためにはある人々の権利を縛ったり,奪ったりしかねない一面も持っています。
そして,一度定められてしまえば余程のことがない限り撤廃されることはありません。
新しい法律を作成する際は,公共の利益や平和に明らかにつながると判断されなければなりません。妥当性と効果を慎重に検討する必要があります。

今回の問題を大前提に照らし合わせるとどうでしょう。
子どものゲーム依存については公共に関わる問題ではありません。
あくまで家庭という土俵の中の問題です。
家庭内暴力や虐待など,生命や身体に危険が及ぶようなことに対してはもちろん法律で守らなければなりません。
しかし,ゲーム依存は家庭で対処する問題です。
この線引きを誤ってしまうと,国家が個人の人権を侵害しかねません。

線引きをしながら新しい法律を作成するのは議会における政治家です。
政治家は人々の意見を吸い上げることは大事なのですが,なんでもかんでも取り上げてはいけません。
最近は政治が少数の偏った苦情に動かされてしまう傾向が多く見られます。
多数の人から支持されて政治を担っているのに,これでは意味がありません。
ぜひ正しい判断をしてもらいたいものです。

政治や法律分野の教育について

日本の学校は政治や法律の学習を重要視していないのではないでしょうか。
小学校では6年生の社会の学習でその分野を扱っていますが,内容はごくわずかです。
一方歴史とか,環境に関する学習はやたらと多く扱います。
また,教師は政治や法律の話をするの嫌がります。「思想の偏りが出ていないか・・」といったことを必要以上に気にしている感じです。
思想の偏りを押し付けるのはいけませんが,法律,政治の仕組みをきちんと理解することは大切なことです。知らなければ,思想を持つことするできません。
個人的には社会科の学習内容は大きく見直す必要があるのではないかと思っています。
小さいころから,政治や法律について年齢に見合った内容を学び,自分の考えをしっかりと持った人が育つのが理想です。

まとめ

香川県での「ネット・ゲーム依存症対策条例」は,法律の意義や妥当性を考えるよい教材になるのではないでしょうか。
ときには正しい事例よりも,間違ってしまった事例の方が勉強するのに役立つ場合があります。

単に法律が存在するから守る,ということではなく,その妥当性について自分で考えることが重要です。

法律は把握しきれないほど多く制定されています。
間違って作られてしまったもの,現在の状況にそぐわないものも多くあるのではないでしょうか。

ここ30年ほどで社会情勢が大きく変化しました。
法律を一度,大きく見直す時期が来ているのかもしれません。

 

 

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