大迷惑な「にわとり達」との悲しい別れ

中学生のころの思い出話です。

にわとりがやってきた

ある日突然にわとりが現れた

ある日,家のそばの道路ににわとりが2羽歩いています。

なんだか,絵本の冒頭のような始まりですね。
絵本ではなく現実にあったことです。

2羽のにわとりは,ひよこ以上成鳥未満といった,若鳥でした。

すずめや鳩は常日頃目にしますが,にわとりが外を歩いているのを見たのは後にも先にもこのときだけです。

私は小学生の頃に自宅でにわとりを飼っていたので,にわとりには親しみを抱いていました。
このにわとり達を放っておくと野良猫に食べられてしまうことは明白でした。

まだ自宅ににわとり小屋が残されていたので,にわとり達を捕まえて自宅に連れてきました。
にわとり達は人に対する警戒心がなく,あっさり捕まえることができました。

前に飼っていたにわとりとは,同じく飼っていた犬を交えてよく遊んでいました。
気の強いにわとりだったので,犬も私もよくつつかれて痛い思いをしたのですが,犬や私の体の上に飛び乗ってくるなど,程よくなついておりかわいがっていました。

拾ったにわとり達を飼い始めて,2か月程経ったでしょうか。
身体もしっかりしてきて,すっかり大人に成長しました。

このままペットとして飼い,仲良く暮らしたかったのですが大問題が発生したのです。

早朝の大絶叫

なんと,このにわとり達,朝4時頃になると鳴き始めるんです。
この鳴き声が大音響。
「こけーーーーーここここここここけーーーー!!!!!」
1時間程でしょうか,ものすごい響きです。

早朝に大声で鳴くのは雄鶏だけで,牝鶏は鳴きません。
ちなみに,他の鳥についても同様にオスが鳴くそうです。
このにわとり達はオスでした。

音の響きやすい早朝に,縄張りを主張する目的で鳴いているとのことです。

また,雄鶏の鳴く時刻は体内時計によって制御されており,年間を通してほぼ同じ時刻に鳴くとのことです。

鳴き始めると毎日定期的に鳴きました。

家族ともどもすっかり寝不足になってしまい,体調を崩す始末。
私は音に敏感なこともあり,にわとりと一緒に無駄に早起きをさせられることになりました。

近所の方も「にわとりアラーム」にたたき起こされてしまったと思います。
苦情は来ませんでしたが,苦情を言われる前に,申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。

何度もにわとり達に
「うるさいから鳴くのはやめてくれ」と説得しましたが,当然のごとく言うことを聞いてはくれません。

引き取り先を求めて

にわとりを飼い続けることは不可能だと判断しました。
このままでは,この地域一帯の住民の健康が損なわれてしまいます。

私はにわとりを段ボールに入れ,引き取ってもらえるところを探しに行くことにしました。
行き先を特に決めず,電車に2時間程乗り,市街地から離れた農村部にやってきました。

農家を一軒一軒まわって,にわとりを引き取ってもらえないかお願いしました。
どの農家をまわっても似たようなことを言われ断られてしまいました。

・雄鶏は卵を産まないからいらない
・雄鶏は鳴き声がうるさいからいらない
・食べてもいいなら引き取る

食べる・・・・
困った存在でしたが,かわいいペットとして飼っていました。
食べさせるわけにはいきません。

半日かかって多くの農家にお願いに行きましたが,引き取り先は見つかりませんでした。

ちなみに,このにわとり達は「名古屋コーチン」という種類であることがわかりました。

何件かの農家の方から指摘されたためにわかったことです。
かなり肉がおいしいことで知られているとのことです。

大事に飼ってくれないかとお願いしている際に,
「そのにわとりは,肉質がひきしまっていてとてもおいしいんだよ。」と言われ
苦笑いしながら,話を聞いていました。

泣く泣く山に放つことに

最終的には,人里離れた山の中ににわとりを放すことにしました。
山の奥まで来て段ボールからにわとりを取り出し,最後のえさを与えました。

何も知らないにわとり達は,えさを食べたり,土をくちばしで掘ったりしています。

「猫には気をつけろよ。」「元気でやれよ。」と声をかけ
後ろめたい気持ちでいっぱいになりながら,そろそろとその場を立ち去りました。
なんだか「ヘンゼルとグレーテル」や「はらぺこぷんた」の話を思い出しました。

帰りの電車の中では悲しい気持ちになりましたが,仕方ありません。
次の日から,家族も近所の人も,にわとりの声に起こされることはありませんでした。

今でもこの二羽のにわとり達を思い出して,なんだか胸がしめつけられそうになるときがあります。

子どもの頃は,今よりもセンチメンタルな優しさを持っていたような気がします。
すっかり大人になり,センチメンタルな面は弱くなりました。

懐かしい思い出を書いてみました。

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